sakura542gouのブログ

日々思うこと色々書いてます。今年は空と結婚し、新たな生活が始まりました。

金星最大の謎・スーパーローテーション


 北海道大学の堀之内武准教授は2017年8月29日、宇宙航空研究開発機構JAXA)の金星探査機「あかつき」の観測により、近世にこれまで知られていなかったジェット気流が発見されたことを、JAXAと共同で発表しました。


金星には「スーパーローテーション」という謎の気象現象があります。太陽系惑星の気象現象の中でも最大の謎と言われるスーパーローテーションは「金星の自転よりも速く、金星を一周する風」だということです。自転よりも速くといっても、金星の自転は遅く、金星の一年は地球の224日に当たりますが、自転周期は243日で、自転の方が遅いわけです。自転の向きが逆なので、金星上の一日の長さは地球の117日に当たります。

これほど遅い金星は片面だけが太陽に加熱され、反対面は夜になって冷えてしまいます。すると地球の赤道と北極・南極のように昼側と夜側の空気を入れ替えるような風が吹きそうに思えますが、金星には金星を東から西へ1周する風が、地球時間で4日前後という金星の自転よりも速い速度で吹いています。なぜほとんど止まっているような金星の自転の向きに、時点よりもはるかに速い速度で風が吹いているのかは、現在も謎だそうです。


このスーパーローテーションは過去の金星探査でわかっていましたが、JAXAの金星探査機「あかつき」は新しい現象を観測しました。それは赤道付近の低層大気に、スーパーローテーションとは異なる流れがあることでした。

金星は大気が濃く雲も厚く、雲の表面の高さは高度70キロにもなります。地球ではほとんど真空になる高さです。風速は秒速100メートル程度で時期や場所による違いはあまりなかったそうです。

今回「あかつき」は赤外線カメラを使い、高度40キロ以下の雲の風を調べたそうです。すると、赤道付近では秒速80メートル以上の暴風が吹き、赤道から離れると風が弱まるという現象が発見されました。このような現象は今まで観測されなかったということです。

過去にも2007年から2008年にかけてヨーロッパ宇宙機関の金星探査機「ビーナスエクスプレス」が同様の観測をしていましたが、このような強い風は見当たらなかったということです。また、あかつきで観測されたのも2016年7~8月で、それ以前は観測されていないということです。スーパーローテーションと違い、吹いている時と、吹いていない時があるようです。

増えた謎・解き明かされる謎

発見した堀之内准教授によれば、この新しいジェット気流がなぜ起きているのかはわかっていないそうです。ただ、金星のスーパーローテーション自体が、なぜ起きているのか、わかっていない謎の減少だそうです。

赤道付近にだけ強い風が吹くのは、力学の常識から考えると不思議だということです。回転する物体は半径を小さくすると回転が早まります。地球でも、赤道上の渦が北半球や南半球に移動すると回転が強まり、台風などの現象になります。回転が赤道上で最も早いというのは、その逆の現象ということです。

堀之内准教授は「これまで、さまざまな仮説に基づいて、スーパーローテーションのシミュレーションが行われたが、どれが正解に近いかはわからなかった。しかし、過去には赤道にジェット気流が起きてしまうシミュレーションが、非現実的だと却下されたこともある」と説明し、金星研究の進歩への期待を語っています。

金星大気の研究は地球の役に立つか

金星の謎が明らかになったら何の役に立つか、と考える人もいるかと思いますが、金星大気のシミュレーションプログラムは、基本的に地球上の天気予報に使われているものと同じ原理だそうです。金星も物理法則は同じなわけで、なぜこれほど違う環境になっているのでしょうか。

地球に暮らす人類は、地球の気象現象が当たり前だと思って生きています。しかし、宇宙には様々な星があり、気象現象も異なります。地球の気象現象は当たり前ではなく、たまたまこうなって見えるともしています。そこで、地球ではありえない金星の気象現象を調べることで、今までは思いもよらなかった気象の原理が発見されるかもしれません。

金星で起こる謎のジェット気流。地球では考えられない気象現象ですが、その解明に一役買うかもしれませんね。
 地球と金星は大きさや質量などがよく似ていて、双子星ともいわれますが、自転軸は178度傾いており、地球など、他の惑星とは違って、東から西に自転しています。また、気圧は90気圧と、高圧がかかっており、大気の主成分は二酸化炭素。そして平均気温は480度という灼熱地獄の世界で、分厚い雲は濃硫酸という地球とは大きく異なる環境を持っています。なぜ地球と金星はここまで大きく環境が異なる星になってしまったのか、太陽からの距離以外にも説明がつかない現象があり、スーパーローテーションや、赤道近くのジェット気流もその一つと考えられています。地球の気象原理が全く当てはまらない環境を持った金星。その謎が解明される日はやってくるのでしょうか。